『がん患者の心を救う―精神腫瘍医の現場から―』
名著セミナー新聞10号 2009年3月より
008年9月27日“名著セミナー”課題図書
『がん患者の心を救う
―精神腫瘍医の現場から―』
埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教 大西 秀樹 著
河出書房新社 2008年4月発行
専務理事 村上 正
本書の帯(表)には、俵萌子氏(NPO法人がん患者団体支援機構理事長)が、「体のがんを書いた本はたくさん読んだ。でも、がん患者の心を対象にした医師の本は読んだことはなかった。たぶん、これが日本で最初の本だろう。閉じられた患者の心の扉をそっと開け、暖かい手を差し伸べている医師の姿に私は感動を覚えた。患者、家族、医療者、全ての人に読んで欲しい」と述べています。
また帯(裏)には、「多くの患者が心の悩みを有し、その必要性が叫ばれながら、日本にはまだ数十名しかいない,、がん患者の心を専門に治療する医師―精神腫瘍医、その医師が見たがんと闘う患者と家族の記録」とあります。
これは、がんを患うと精神的にもダメージを受け、うつ症状が発生しやすく、そのため症状に悪影響が出ることがかなりあり闘病にも影響します。それにも拘らず、精神腫瘍科は国立がんセンターを含め、まだ日本では4箇所しかないとのことです。
今回のモデレーターは、以前このセミナーで、ナチのユダヤ虐待の中で生き残る精神力を描くホロコースト文学の『夜』などの指導して頂いた、本書の著者の大西秀樹先生です。先生はがん患者の精神治療(必要者はがん患者の2~3割)だけでなく、日本で初めて、がん患者の家族の精神治療も行っておられます。サブモデレーターは内山さんと私でした。1人はがん患者で、1人はがんで家族が亡くなったばかりでした。セミナー参加者は医学生10名と市民30名です。
なお、名著セミナーの特徴として正解は求めないが、セミナー参加者の読んだ感想なり思いを聞きますが、今回は著者がモデレーターなので、内容の詳細をお聞きできました。
大西先生から参加者への事前の設問は6問ありましたが、そのうちの3問と、それへの私の回答をまとめてみます。
1 子育て まだ、1歳に満たない赤ちゃんがいる乳がん患者さんの苦悩について、考えられるもの、そしてその対応策について述べてください。(153~154p)
がんによる肉体的苦痛だけでなく、患者が精神的苦痛を引き起こしている場合であり、その心の苦痛を緩和する治療を施す。身体的医療には、その手立てを施す。社会的苦痛には周囲から支援する制度や方策を伝え、愛情的苦痛には周囲の家族が支えるから大丈夫と伝える。
2 「何か変」 この先生が言った言葉は医療を問わず、日常でもとても大切です。どうしてですか。(215p~
主治医の方で、患者の症状が医師の専門内だけでないのではないか、「変だな」と思ったら別の専門家に回すことが大事である。逆に患者からの「何か変」の訴えを、医師が「それは何でもない」「単なる副作用です」と打ち消す場合はどうか。疑わしきは自身で決めず「俺の分野でない」と他の専門医に診断を委ねるべきである。→大病院では専門性が一般的であり専門外の症状の可能性の「何か変」は大事。
5 その他1 (抗がん)治療を止める決断を患者さんが行ったとき、それをそのまま受け入れてよいのでしょうか。受け入れて良いならその理由。良くないのならその理由を述べてください。(23~26p)(学生は必須)
がんに対して悲観的になりうつ病になっている可能性がある。うつ病を治せば、闘病意欲が湧いてくるだろう。このときは、本人の意思であるとはいえ、患者のうつ病からくる結論だから、先ずうつ病を治す。この場合は、受け入れてはよくない。
一方、患者の人生観から、あるいは今まで十分に幸福であった。これ以上苦しむだけに人生はいやだと考え、その闘病がムダだと考えている人もいる。この場合は患者の意思を尊重する。
参加者はセミナーの一週間前に回答し、それをサブが要約し、当日全員に配布した。モデレーターの先生の司会で対話が始まり、身近なだけに参加者から幅広い意見と感銘の感想があった。

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