名著セミナー新聞より

2009年5月 5日 (火)

『がん患者の心を救う ―精神腫瘍医の現場から―』

名著セミナー新聞10号 20093

008927日“名著セミナー”課題図書 

がん患者の心を救う ―精神腫瘍医の現場から―

 埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教大西 秀樹  

河出書房新社 20084月発行

専務理事 村上 

本書の帯(表)には、俵萌子氏(NPO法人がん患者団体支援機構理事長)が、「体のがんを書いた本はたくさん読んだ。でも、がん患者の心を対象にした医師の本は読んだことはなかった。たぶん、これが日本で最初の本だろう。閉じられた患者の心の扉をそっと開け、暖かい手を差し伸べている医師の姿に私は感動を覚えた。患者、家族、医療者、全ての人に読んで欲しい」と述べています。

 また帯(裏)には、「多くの患者が心の悩みを有し、その必要性が叫ばれながら、日本にはまだ数十名しかいない,、がん患者の心を専門に治療する医師―精神腫瘍医、その医師が見たがんと闘う患者と家族の記録」とあります。 

これは、がんを患うと精神的にもダメージを受け、うつ症状が発生しやすく、そのため症状に悪影響が出ることがかなりあり闘病にも影響します。それにも拘らず、精神腫瘍科は国立がんセンターを含め、まだ日本では4箇所しかないとのことです。

今回のモデレーターは、以前このセミナーで、ナチのユダヤ虐待の中で生き残る精神力を描くホロコースト文学の『夜』などの指導して頂いた、本書の著者の大西秀樹先生です。先生はがん患者の精神治療(必要者はがん患者の23割)だけでなく、日本で初めて、がん患者の家族の精神治療も行っておられます。サブモデレーターは内山さんと私でした。1人はがん患者で、1人はがんで家族が亡くなったばかりでした。セミナー参加者は医学生10名と市民30名です。

なお、名著セミナーの特徴として正解は求めないが、セミナー参加者の読んだ感想なり思いを聞きますが、今回は著者がモデレーターなので、内容の詳細をお聞きできました。

大西先生から参加者への事前の設問は6問ありましたが、そのうちの3問と、それへの私の回答をまとめてみます。

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2008年2月19日 (火)

代表的日本人

『代表的日本人』内村鑑三著を読む

村上

 

「内村鑑三は,「代表的日本人」として西郷隆盛・上杉鷹山・二宮尊徳・中江藤樹・日蓮の五人をあげ,その生涯を叙述.日清戦争の始まった1894 年に書かれた本書は岡倉天心『茶の本』,新渡戸稲造『武士道』と共に,日本人が英語で日本の文化・思想を西欧社会に紹介した代表的な著作です。」

(名著セミナー募集チラシの「テキスト紹介」より)

 

 

名著セミナー講演会で「日本人のこころ 内村鑑三『余はいかにして基督教徒となりしか』をめぐって」の八木誠一先生の講演を前に、9月のセミナーで内村鑑三の『代表的日本人』を読みました。進行役は宮原忍さん、サブは田島さん、藤原さんです。

 

内容は上覧の「テキスト紹介」のとおりで、その代表的日本人は西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮の五人です。

この五人の時代背景の、明治維新、封建政治、農業経済、教育制度、宗教を紹介し、この人物が持つ、価値観・美徳・信念・宗教等を含めて人物を物語り、制度面でも道徳面でも、日本と日本人は、人情・文化の面で未開でなく、西洋と道徳部分で異ならないことを、西洋人の常識に関連させて分り易く書いてありました。

 

宗教から発生する道徳や価値観が、社会の根幹であると認識している欧米人に、非基督教国の、代表的日本人の五人が具現していた道徳や価値観は、西洋と同じ高さの道徳と価値観であり、その人格と道徳は、偉人伝として日本人の模範となり、日本人を導いているとの主張でした。これは日本が欧米から圧迫を受けていた時代に、日本の擁護防衛のために欧米人向けの出版物で、それが日本版になると、それは日本人に自覚と反省を促します。

 

どの国の文化でも、ここに例示されたような、人間として最良質な部分は世界共通で、最悪の部分も世界共通です。最良の部分を共通の模範・美徳とし、最悪の部分は共通して避けるのが人類の課題でしょう。この観点では、東西の文化の志向は世界共通になり、文化の差は基本点で見る限り無い筈です。

その中間にある習慣や文化についてお互いの差異よりも、その基本的共通性を見てそれを理解尊重して、夫々がその文化の良質化を目指すべきと思いました。私のセミナーへの期待です。

 

現代人の我々の眼を通して、それを再吟味しようというのが、このセミナーの主たる課題でした。そこで話してみるとその評価が一致する点もあれば、割れるところもあります。しかし、「三人寄れば、文殊の智慧」と言いますが、本書を読込み考えて来た三十人以上で話すと、一人の時と違う、新しい観点や事実や智慧に出会い、実に刺激的で、感心したり、楽しい納得のひと時でありました。

 

(名著セミナー新聞5号 2007年10月)

文明の衝突と日本

『文明の衝突と21世紀の日本』ハンチントン著

 

村上 正

 

文明の衝突S・ハンチントン著、鈴木主税訳【集英社1998年(原著1993年)2800円】は、500ページを超す大著であるため敬遠しました。

市民用のセミナーとしてはテキストを、新書版の『文明の衝突と21世紀の日本』サミュエル・ハンチントン著、鈴木主税訳集英社新書2000年】にしました。

これは原著の要約と著者の1998年の日本での講演と、1999年の論文「孤独な超大国」を含んでいます。

私たちは毎日と言ってよいほど、中東、イラクのニュースに接しています。そこで「文明の衝突」をセミナーで取り上げ皆様のご意見を聞きたいと思いました。セミナーの進行役は、村上正と平川茂です。

 

セミナーでの設問は下記の通りでした。

我々は、ある文化・文明の下で生きています。

同一文化・文明のもの同士は親密感を持ち、衝突は起こらない。他方、差異あるもの同士では衝突が起き易い? ではその文化・文明とはいかなるものか?どのような問題があるのかを考えたい。

 

1 文明と文化やそれによる価値観について、本書には色々な定義が散見されます   が(23648389106~、182~p)、それらを纏めてみた上で貴方のご感想、ご意見をお聞かせ下さい。

 

2 著者が、本書で言いたいことは、最終節の「文明の共通した特性」(182~189頁)にあります。それを纏めてみて、あなたの感想を述べて下さい。(→第1問から導かれる)

 

3 「文化的および文明的観点から観た孤立国家・日本の特徴45P」の様に、日本は文化的文明的に孤立と思いますか? 

「西洋化しない日本」47p)の日米の差の指摘を参考に、あなたの世界観の中でどう考えるか、感想をお聞かせ下さい?

著者の論述の中から、文化・文明に関する具体的な問題を考えてみる。

 

4 本書の、日本への意義が、中西輝政教授によって「解題―日本人とハンチントン理論の価値」(201頁~)に纏められています。それら四つの項目に対して、あなたの疑問や、あるいはそれへの感想をお聞かせ下さい。

 

5 米国外交政策への著者の色々の提案は、新モンロー主義的な90頁の提案に尽きると思いますが、もしこの提案通り(米国が多極体制の世界における大国の一つ)となった場合、国際社会にはどのような変化(影響)が起こると考えますか?

 

6 本書には論議・反論が多くいわゆる名著かは?ですが、①米国の戦略研究家として時代を予見した点、②米国の外交政策に今後大きな影響を与えるであろう点、③色々と考えさせる点で、読むに値する名著と思います。勿論 911テロは予見不能でしたが、その後のアフガン戦争やイラク戦争の推移を見て、③で貴方が、考えたことがあれば述べて下さい。

 

参加の皆様から出された事前回答は大変真剣で、ニュースでも身近であるだけに議論も非常に熱の篭ったものでした。

 

(名著セミナー新聞第5号 2007年10月)

比較文化論の試み

山本七平著『比較文化論の試み』とアンケート

村上正

 

平成18年1月の名著セミナーで、本書をテキストにしたのは、日本人とは何か、日本文化とは何かが、最近気になって仕方がないので、出るだけ根源的に分析したものをじっくり読んでみたかった。

 

本書のはじめに、「明治の内村鑑三の危惧は、彼の図式では宗教→道徳→政治→経済となっていても、経済→政治→道徳→宗教とはなっていません。・・・

すべての人が一切の根幹は経済にあり、人の意識も文化もすべてこれに支配されると言う図式を一種の宗教信仰のように信じきっていたのです」とある。

 

この紹介は、現代の著者の危惧である。私にも漠然としているが同じ危惧がある。そこでこれを検証したかった。

 

本書は、日本人とヨーロッパ人、ユダヤ人、アラブ人との差異を、文化の根源にあることばや宗教、法意識などを分り易く解明し、日本文化の特性が浮き彫りにされている。

 

本書の結論は、あとがきの「西欧であれ日本であれ一つの伝統文化の結実の上に生きているので、絶対普遍化できない基本をもっている。お互いが別々であることをみとめて、互いに理解するという以外に方法はない」とあるが、とは言うものの、理解は容易ではない。理解する為の手段はないだろうかという問題が提起される。

 

先ずは「名著」を読み、英知を汲み取り、皆と議論し理解を高め、知的水準を上げて、文化相互理解への端緒にする。そのような意図の下で、アンケートを作り、それに基づき、参加者が読んだ著者の英知と、各自の知恵を4時間に渡り話し合いました。

 

下記はそのアンケートの一部です。

 

著者は冒頭、内村鑑三の欧化への危惧を紹介し、そして「戦後三十年を内面的には完全な空洞化への道を進んできた310P」と言っています。何処がどう問題でしょうか。

(以下の設問では、頁指示を省略)

 

2「精神的な弱さとひとりよがりに加えて文化の確立がなかった。またなぜ自分はそう考えるのかの意識がゼロ」とは何を指しているのでしょか。

 

4「日本人は感じ方の違いを無視する、無視するのが科学的と思ってきた」は、何が問題で、どうすれば良いのでしょうか。

 

5「自然ですんだ日本・すまなかった世界 臨在感の特色把握と歴史観的把握」で日本の文化の特色を挙げていますが、貴方の感想や今後の日本への処方箋へのご意見を。

 

7「日本にない対立概念、日本の場合は二元論」と「ローマ法の世界と自然法の世界」で、著者は我々に何を期待しているでしょか。

 

(名著セミナー新聞4号より 2007年5月)

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